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Voce d' Angelo レナータ・テバルディに捧ぐ

レナータ・テバルディの専門ブログです。情報、動画、鑑賞録など。

テバルディ 歌唱論(1)

テバルディ 歌唱に関するコメント

筆者が依拠したCasanovaの伝記には、エピローグとして、テバルディへのインタビューが掲載されています。

彼女自身の認識と事実がどれだけかけ離れていようとも、これがテバルディ自身の、自分の歌唱に対する自己評価なのですから、なるべく忠実に訳してご紹介したいと思います。ただ、技術的な表現と、実際に体に起こる感覚は、歌ったことのない私には直感的にわかりにくいところもあり、翻訳しづらかったのも事実です。訳者が最善を尽くした結果としてご一読下さい。

なお、文字だけでは退屈なので、テバルディのプライヴェート・フォトやバックステージ・フォトを入れております。

今回は一度ずつのご紹介を増やし、6回シリーズでお届けします。

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Q:あなたのキャリアを通して、歌唱技術に変化はありましたか?

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A:私の歌唱技術はずっと同じでした。歌唱技術というのはそうでないと。私がキャリアのはじめに習得したことは、私の特色のある声質が求めるものに役立ちました。何年もの間、私は胸声を使うのを避けてきました。時々、偶然使ってしまうこともありましたけれど。声を痛めるのを恐れたからです。後になって、『ジョコンダ』や『西部の娘』を歌うときに、これらの役柄が必要としたため、私の胸声は強くなっていきました。年月を経るにつれ、私の役柄はだんだんと私の一部のようになっていって、より微妙で深みのある解釈ができるようになりました。1963年、ニュー・ヨークで、一年間歌うのを休んだとき、私の声楽コーチは私が自信を取り戻し、歌い続ける勇気を取り戻す手助けをしてくれました。ですが、私は技術を変えることはできませんでした。私の一部になっていたからです。

Q: 伝統によって課される「一定不変のもの」とは何でしょうか?

A: 「伝統」は「課す」ということはしません。ですが、既成の伝統を尊重することはできます。伝統は私たちにベル・カントの技術を習得するのを教えてくれます。その技術の中には人が「息の上で歌う」ことが含まれています。若い歌手達は、レガートを"fiato lungo"(支えのある息)を使って歌うことを学びます。モーツァルトベッリーニ、そしてドニゼッティは、私たちに「息の上で歌う」ことを教えてくれ、フレーズの終わりまでに息を使ったり、維持したりすることを教えてくれます。まるで、ヴァイオリンの弓が上下に動かされるときのように。歌手は音楽的なフレーズを、ブレスの入れすぎで途切れさせてはいけません。ベル・カント唱法では、「息の上で歌う」ことを基礎にして、レガートやピアニッシモや艶のある音で歌うことが、もしかしたら伝統が「課する」技術と考えられるかもしれません。伝統はスコアに"oppure"(または)の指示があることで、私たちにいくらかの自由を与えてくれます。それらはカデンツァや高音について歌手の選択を許すのです。このことは、普通、作曲家が存命で、変化形を許容した場合成立するものです。

Q: 呼吸法に変化はありましたか?

A: 私のキャリアの間は、私の呼吸法も呼吸の支持法も変わりませんでした。男性は横隔膜を使って呼吸しなければならないこともあります。危険な緊張が起こったときのみ、または起こりそうになったときのみ、です。ですが、女声は追加の支持を使います。それは歌手によってそれぞれです。私は横隔膜での支持を使いました。そして呼吸するときは背中で感じられるほど深く吸いました。一番重要なことは、肩の筋肉を決して緊張させないようにすることです。声は息の上を漂わなければいけません。若い歌手が理解しなければならないのは、声と息は、水の入ったコップに油が一滴浮いているようなものだということです。油は水の中には沈んでいかず、浮いたままです。声も支持された息の上に漂ったままにしなければいけません。多分、キャリアの終わりには、もっと長く歌い続けるために、何かを変えなければならないかも知れません。胸声の使用は難しいパッセージの音を歌うための助けになり得ます。たとえば、E, F, F♯, Gなどを歌うときに。

Q: あなたは音を頭でお聴きになりますか?マスクで、ですか?それともそのほかの部分で?

A: 声がきちんとした場所に配置されているならば、音は自動的にマスク(マスケラ)に到達します。息は声がマスケラにあり続けるよう支えてくれます。そして、B♭、B、C は頭声で歌われます。声域の変換点では安定を欠かないようにしなければなりません。そうすればAは整います。何よりもまず、感じるだけでなく、考えなければならないのです。音がマスクにあるように。

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Q: あなたはどのような身体的な配慮をなさいましたか?姿勢ですか?胸腔ですか?首ですか?頭の位置ですか?

A: 基本的な歌唱の規則は、硬くならずにまっすぐに立った姿勢を保ち、横隔膜を最大限に使うことです。何よりも、リラックスしなくてはいけません。喉は自由でなければいけません。音は頬の中で反響すべきであって、鼻の中で反響させてはいけません。そして、音が頭の頂点から昇っていくように感じなければなりません。