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Voce d' Angelo レナータ・テバルディに捧ぐ

レナータ・テバルディの専門ブログです。情報、動画、鑑賞録など。

テバルディ 歌唱論(3)

テバルディ 歌唱に関するコメント

Q: 新しい役柄を歌うときどのようにしてあなたの精神をコントロールなさいましたか?どうやってリラックスなさったのでしょうか?舞台上ではどんなことをお考えになっていたのですか?

A: 新しい役柄の準備はとても大変です。それに正しい歌唱法で歌わないとダメージになります。はじめに、私はスコアを読み、言葉や心理に注意しながらスコアを心の中でイメージするのです。それから言葉を音楽と合成します。音楽と言葉は同じ重要性を持っています。というのは、言葉は音楽を知るのを助けてくれますし、音楽は役柄の発展を理解し、感じるのを助けてくれるからです。そのスコアはすぐに私の第二の天性のようになり、私はそれを育てていきます。(私はいつも役柄を会得することと、何かの芸術作品を生み出すことを比較してきました。芸術家はまず作品の芽を生じさせます。それから、作品を作る準備が整ったら、絵画であれ、彫刻であれ、文学作品であれ、作る過程を始めます。というよりは、新しい役柄を作るのは、子を産む前の母親のようなものかも知れません。胎内に子供をもち、育て、世界に送り出すのです。ですから、役柄は私たちの内側で育ち、時が来たら私たちはそれを世界に送り出すのです。)

スコアを準備している間、必要なときは先に進まず、ストップして、問題を分析し、訂正しなければなりません。私にとって、このような準備期間として最適だったのは、ベッドに入ったときでした。静寂と暗闇に包まれた中でベッドに横たわっているとき、私はスコアのことを考えに考えて、私の役を静かに歌います。時にはスコア全部。それは私にとって最もリラックスできるときで、ハッピーでした!私はより深く役柄を理解して目覚めたものです。もし、なにか不確かな点があると感じたら、私はすぐにスコアをチェックしました。声楽的な、あるいは音楽的な先入観が無いことによって自信が強まり、緊張がほぐれ、歌うべき役柄の人物像に自由に入り込み、解釈することができます。役になりきることは、もし難しいパッセージに対する緊張があったりすると失われてしまい、観客はそれをすぐに察知します。歌手はいいドライバーのようでないといけません。自信があるから、会話もでき、風景を楽しむこともできれば、問題が起きたらすぐにブレーキを踏んだりカーブしたりする余裕があるようなね。完全に新しい役柄に没頭するために私がもう一つ役立つと考えたのは役柄や関係する時代の歴史的な背景について読書することでした。

Q: レコーディング・セッションの時には、あなたの歌唱技術を変える必要があるとお感じになったことはありますか?

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A: いいえ、全く。スタジオでは舞台がなくて動きもないことから少々難しさはありましたし、スケジュール上の日程が空いたりすると、それが劇的な緊張感を作り出す妨げになったことはあります。これを克服するために、レコーディングの時は、私はいつも自分自身で、ある雰囲気を作り出すように試みました。どのオペラハウスでも、自分の声が跳ね返ってくるのを聞くことが重要です。例え、野外で音の一部分が失われる場合でも。声の音はホール全体に響いてから戻ってこないといけません。そういう場合だけ、歌手は聴衆の全員が自分の声を聞くことができると知るのです。たまには「反響しない劇場」というのもあります。そういう場合は、歌手達はとても自然なことではありますけれど大変な間違いを犯してしまうものです。大きすぎる声で歌う、という。特定の劇場の音響に合わせようとして歌唱法を変えるのは誤りです。レコーディング中の音響上の問題は歌手が関わるべきものではありません。それは音響技師の責任なのです。彼らは自分の仕事の仕方をよく熟知しています。彼らが私にアドヴァイスしてくれたことといえば、音がひずむのを防ぐため、高音を出すときはマイクから一歩退がることや、あるいは頭を左か右にそらすこと、それだけでした。

Q: 何歳くらいの時にドラマティックな役柄に近づくべきだとお考えですか?それは年齢か、歌手の能力かどちらかによるのでしょうか?

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A: キャリアのはじめの頃にドラマティックな役を歌おうとするのは常に、危険なものです。キャリアのはじめの時には、知的な歌手は声にダメージを与えるような役柄は避けるでしょう。にもかかわらず、待てない人が多いですね。私は『ジョコンダ』や『西部の娘』をキャリアの終盤で歌いましたが、それらを適切に歌うのに十分な声を持っていました。知的な歌手は胸声を使うのが賢明か、またはそれを使う頃合いかどうかといったことについて決めなければいけません。それを使うことは害があり、声を衰えさせる原因になりうると皆知っています。年齢が原因するのではないのです。タイミングの問題であって、声を痛めるリスクが少なくなったと判断したとき、がそのときなのです。私が若い歌手達にアドヴァイスするとすれば『外套』や『カヴァレリア・・・』や『西部の娘』、『蝶々夫人』でさえ、キャリアのはじめに歌うのは避けるべきだということです。こうした役柄は、声にとって大変な害となり得ます。