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Voce d' Angelo レナータ・テバルディに捧ぐ

レナータ・テバルディの専門ブログです。情報、動画、鑑賞録など。

テバルディ 歌唱論(4)

テバルディ 歌唱に関するコメント

Q: あなたはどのようにして声をウォーム・アップなさいましたか?毎日、発声練習はどのくらいの時間なさっていらっしゃいましたか?本番の当日はどのくらいの頻度で?不調の時はどう切り抜けられましたか?

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A: ウォーム・アップは、普通に発声練習をすることでしましたが、文字通り、適切な発声練習を、です。そうでなければ上演に必要な声は残らないでしょうから、家にいた方がましです!発声練習は声がどんな状態か知らせてくれます。ある歌手達はちょっとしたトリックや癖を使って自分の声の状態を知ります。そういう人達はトランペットのような声を出してみるだけで、調子が良いかどうかわかってしまうんです。私は決してそういうことはしませんでした。私は、それは一人一人のメーキャップと同じで人それぞれだと思います。私の同僚の何人かは、朝起きるやいなや声の状態が大丈夫かわかってしまいました。勿論、歌手はいつもレッスンやリハーサルの前に発声練習をすべきです。歌手は筋肉をマッサージしなければならないんです。ピアニストやバレリーナがそうであるように。よく知られていることですが、偉大なピアニスト達は作り物の鍵盤で練習します。歌手も同じで、筋肉でできている声帯を訓練しなければなりません。出だしの瞬間に備えるために。

発声練習は、本番前には絶対しなければなりません。いつですかって?それは人によりけりです。私の場合はホテルから出る30分前くらいで、ずっと続けはしません。それから、劇場に着いてから20分くらい、これも断続的にです。メイクをしているときに、私は声の状態をチェックし続けたものでした。本番の日の朝に発声練習することはなかったですが、私は自分の声の状態が大丈夫かどうか判断できました。朝に発声練習をしたためにその後歌えなくなったことに気づいたら、そもそも発声練習しなかったのと同じです。単一のルールはありません。それは人による事柄です。パッサッジョ(声域の変化)が自由にできることは重要です。もし、発声練習をして、声が上手く移行できたら、他に何か問題があっても、もう少し発声練習すれば声は上手く調子が合ってきます。でも、もし声域の移行が上手くいかないようなら、発声練習を続けると声に害を与えますからやめた方が良いのです。例えば、もう控え室に入ったときに前のように声が反響しなかったり、上手く声域移行できなかったりすることに気づいてしまって、もうキャンセルに間に合わなくなってしまったら、とにかく声を出すことに全神経を集中して、もし必要なら、音色や表現を犠牲にするしかありませんでした。

Q: 度々言われてきたことですが、あなたは現役時代最も美しい持ち声の持ち主だと言われていらっしゃいました。オペラでは声が全てなのでしょうか?

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A: 実際、私は神様から特別美しい声を頂いたと思います。私は、上手く歌うためには歌手は特別な声を持っている必要があるという確信を強めてきました。例え後から技術を会得するとしても。私は「彼女は美しい声を持ってはいないけれど、素晴らしい女優だ」と言って満足するオペラファンには同意しません。勿論、よい女優であることはとても重要なことです。観客にとって、全てがリアルに感じられるでしょうから。ですが、なによりも、私がオペラに行くのは歌手の歌を聴くためです。ですから、もし美しい声を持っていて演技も素晴らしければ私は完全にハッピーに、満足して帰宅します。でも、そこそこの声の素晴らしい女優と、素晴らしい声だけれど演技は中庸な人のどちらかを選べと言われたら、私は素晴らしい声の人の方を選びます。もし素晴らしい女優を見たかったら、演劇を見に行きますから。

Q: あなたは、あなたより前に活躍した有名歌手からヒントを得たことはありましたか?

A: 私は過去の「モデル」に追従しようとは決して思いませんでした。全ての声は個性を持っているのです。歌手は自分の人格を直感的に表わすべきです。おのおのの声はそれぞれの個性を持っていて、歌手の人格そのものが声の性格に依存しているのです。声を聞くことで、聴衆は歌手の繊細さや感性を判断することができます。私はトーティ・ダル・モンテが好きだったものです。彼女の声は私のとは全く共通点がありませんでしたけれど。彼女はコロラトゥーラ・ソプラノでしたから。私はいつも軽い声のソプラノのヴィルトゥオージティーに喜びを感じてきました。まるで小鳥が鳴いているように聞こえるのです。例えばジョーン(サザーランド)などはアクロバットのような現象です!

Q: スピントの声や大きな声の持ち主は今日では少なくなったのでしょうか?レパートリーは声の育成に基本的な要素だとお思いですか?

A: そうですね。今は偉大な声の持ち主はまれです。ですが、私はその問題はオーケストラの調音の仕方にあると確信しています。音叉がこの騒動を引き起こしているのです。私たちはもう、何も原曲のキーで歌われていないのを目撃しているのです。今のオーケストラは非常に高い周波数で調音するので、音はもうおおもとのスコアに合わなくなっています。18世紀、音叉は333ヘルツから334ヘルツの間でした。私が歌い始めた頃は440でした。カラヤンが活躍し始めたら、オーケストラは443から444で調音するようになりました。ですから、今はもはや本当のコントラルトや、メゾソプラノや、バリトンや、バスがいないのです。最後の本当のイタリアのメゾソプラノといったら、フェドーラ・バルビエーリかフィオレンツァ・コッソットくらいです。この人達は本当のメゾソプラノの声を持っていましたが、他の人達はソプラノとメゾソプラノの中間くらいでした。何の理由もなく、ちゃんとした声がそんなに早く消えるはずがありません。私はもし今の歌手たちが作曲家の書いた原曲のキーで歌うことが許されるのならば、これらの消えてしまったと思われる声がまた現れると確信しています。高い調音で歌うことは声が「絞め殺される」理由になっています。というのは無理に高い声を出そうとすると喉は閉じてしまうからです。逆に、喉が開いた状態に保たれていれば、音はより自由に出るものです。

レパートリーが声の育成に基本的かどうかですって?勿論です!正しいレパートリーでありさえすればね。不適切なレパートリーはキャリアを劇的に短くしてしまうものです。役柄はそれぞれの声にあったものでなければなりません。今では何でも歌ってしまうのが流行っているようですね!ああいうのは声にとってとても有害なものです。