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Voce d' Angelo レナータ・テバルディに捧ぐ

レナータ・テバルディの専門ブログです。情報、動画、鑑賞録など。

1951年 『ジョヴァンナ・ダルコ』のラジオ放送用録音(1)

スタジオ録音 ジョヴァンナ・ダルコ

大変お待たせ致しました。休業中もブログにお越し下さいました皆様に深く御礼申し上げます。

本日からまたブログの更新を再開致します。但し、休業中かなり大変手間のかかる記事を用意したため、思ったほど新しい記事を準備できませんでした。また、一定期間休業の必要が出てくるかも知れません。その際はまた、事前にお知らせ申し上げます。

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さて、今回から数回に分けて、ヴェルディの初期の珍しい作品、『ジョヴァンナ・ダルコ』におけるテバルディの歌唱などをご紹介していきます。(もうYouTubeに動画はアップ済みで放置したままでした・・・大変申し訳ございません。)

ジョヴァンナ・ダルコ(Giovanna d’ Arco)は、ジャンヌ・ダルク(Jeanne d’ Arc)のイタリア語読みです。つまり、これはジャンヌ・ダルクを題材にしたオペラなのです。が、台本は・・・はっきり言って、ひどい出来映えなのです。

そもそも、ジャンヌ・ダルクは史実の中でも曖昧模糊とした存在で、今でも専門の歴史家の論争の的らしく、実際に彼女がどのような人だったのか、定説はないらしいようですが・・・。私の、遠い、学生時代の世界史の授業などでサラッと説明された、彼女についてのボンヤリとした記憶に頼ると、ジャンヌ・ダルクはドンレミというフランスとドイツの国境近くの寒村の、何の変哲もない村娘だったのだけれど、突然神の使いから霊感を受け、少女の身でありながら、英仏戦争で劣勢にあったフランス軍の先頭に立って闘い、大いに仏軍の士気を高めたがために、味方の勝利に寄与した。が、彼女を目の敵にしていた英軍によってとらえられ、魔女として火刑に処された、という経緯・・・だった気が・・・します。

彼女の伝説の中には、貴族の中に紛れ込んでいた国王シャルル7世を、会ったこともないのにたちどころに見分けた、とか、自分の命は一年しかないのだから、急いで欲しい、と側近達を促したとか、確かに現実的に考えると説明のつかない要素がまま、ありますね。

さて、実は、大してあてにならない「史実」はこのオペラの場合、どうでも良いのです。何故かというと、前記のように、台本があり得ないほど一般的なジャンヌ・ダルクに対する理解とかけ離れているので。

以下は、ジャンヌ・ダルクがどうこう、ではなくて、ヴェルディの『ジョヴァンナ・ダルコ』はどういう話か、というあらすじのご説明です。

(通常、メジャーで、よく知られていると思われるオペラに関してはネット上を探していただければいくらでも梗概が出てくるのでご説明は割愛させていただいているのです。今更ですが、おことわりしておきます。)

主な登場人物
・ジョヴァンナ・ダルコ(S)(ジャンヌ・ダルク
・ジャコモ(ジャンヌの父)(Br) *1
・カルロ七世(シャルル七世)(T) *2
・デリル (T)カルロの側近
・タルボ (Br)イギリス軍の連隊長

◇プロローグ
ドムレミィ村にしつらえられた、王家のための館。村人達と王の側近達が戦況について憂いている最中に、カルロがやってくる。カルロは苦戦に陥っているオルレアンの防衛を解いて良い、と命じて皆を驚かせると、自分の見た夢について語る。夢の中で森の中の一本の樫の木の下でまどろんでいると、そばにあった聖母像から、「私の像の下に兜と剣を置きなさい」、というお告げが聞こえた、というのである。その森は悪霊に呪われているから、と止める村人達の忠告を遮って、王はお告げの通りにすること、退位することを宣言する。

場面が変わって、森の中。先ほど王が言った樫の木とそっくりな木があり、その下には人が腰掛けるのに丁度良い岩がある。ジャコモは震えおののきながら涜聖のうわさのある樫の木をながめ、さらに近くの洞窟を探りに行く。ジョヴァンナが崖の上から降りてきて、できたら祖国のために戦いたい、兜と剣が欲しい、と願う。そのうち、岩の上に腰掛けた彼女は居眠ってしまう(・・・)。

やがて、同じ崖の上からカルロと側近達が現れ、お告げの通り聖母像の下に兜と剣を置く。眠っているジョヴァンナの耳には、悪魔の誘惑の合唱と、天使達の兜と剣を取って祖国のために立ち上がれ、という合唱が聞こえる。天使の合唱を耳にした彼女は飛び起き、丁度そこに居合わせたカルロに、この兜と剣を手に入れたからには、自分が祖国を勝利に導いてみせる、と憑かれたようにカルロ達に告げる。聖母に自分のあばら屋と年老いた父を託すジョヴァンナ、ジョヴァンナの様子に深く心打たれるカルロ、娘が悪魔に取り憑かれたと信じたジャコモの三重唱。ジョヴァンナとカルロは去り、ジャコモはその場に倒れ伏してしまう(・・・)。

◇第一幕
オルレアンで結局敗戦した英軍の宿営。タルボを囲んで、ジョヴァンナを悪魔呼ばわりする。そこへ錯乱した様子のジャコモがやってくる。娘が悪魔に取り憑かれたと信じた彼は、他ならぬわが娘を敵軍に渡す約束をする(・・・)。

一方、ランスの宮廷では、戦勝を祝う祝宴が開かれている。ジョヴァンナは場違いな思いに、祝宴に加わるのに気乗りがせず、故郷の村に帰る決心をする。そこへカルロがやってきて、ジョヴァンナへの愛を打ち明ける(!)。それを聞いて深く動揺するジョヴァンナ。かき口説くカルロの言葉に、彼女も愛の言葉を発するが、そのそばから、もう罪を犯したのではないかとおののく。天使の合唱も聞こえ、彼女に警告を発する。

そこへデリルたちと側近達がやってきて、戦勝パレードを開くので、ジョヴァンナには軍旗をもって先導して欲しいと言ってくる。カルロは是非そうして欲しいと言うが、ジョヴァンナに、もうお前は堕落したのだと彼女をあざ笑う悪魔の合唱が聞こえてくる。

◇第二幕
ランスで戦勝パレードが行われ、手はず通り、ジョヴァンナは軍旗を持って行列に加わるが、その心は乱れている。その様子を見てますます自分の娘が悪魔に取り憑かれたのだと確信するジャコモ。彼は行列の中に紛れ込んだ揚句、カルロとジョヴァンナの前に出て、自分の娘を告発する(・・・)。ジョヴァンナはしかし、ジャコモの詰問に対し、申し開きをしようとしない。雷鳴がとどろき、人々はそれを天の啓示と受け取って、沈黙したまま一言も発さないジョヴァンナが、実は魔女だったのだと信じてしまい、カルロの抗議にも耳を貸さず、彼女を英軍に引き渡すことにしてしまう。

◇第三幕
ジョヴァンナは英軍の城塞の中に閉じ込められ、太い鎖につながれている。兜と剣はない。仏軍が英軍に追い詰められている様を幻に見たジョヴァンナは、戦場に駆けつけたい思いを語り、自分が世俗の愛に心を奪われたのは一瞬だけで、心は全て神に捧げられている、と独白する。それを物陰から聞き、自分の致命的な過ちを悟るジャコモ(・・・)。ジャコモはジョヴァンナの鎖を解き、父と神に許されたと感じたジョヴァンナは急ぎ戦場に駆けつける。彼女は瞬く間に戦場に到着し(!)、仏軍はあっという間に勢力を盛り返す。

カルロは自分を罰してくれというジャコモに、それどころか、ジョヴァンナにお前のことを託された、と告げる。デリルに戦況を確認したカルロは、英軍は壊滅したが、ジョヴァンナも戦死した。と報告され、大いに動揺する。

ジョヴァンナの遺体が運び込まれるが、カルロの前に運ばれると、彼女は覚醒する(・・・)。彼女は自分が魔女ではないことを明言し、軍旗を取りたいと希望する。カルロは彼女の希望を叶えながらも、自分たちをおいていかないで欲しいと願う。しかし、全員の要望にもかかわらず、ジョヴァンナは天に昇っていく。

注:(・・・)や(!)は当ブログ主が呆然とした箇所です。

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このとおり、このオペラの台本ははっきり言って、ゴミ(言い過ぎ?)でしょう。こんなものを歌えと言われたテバルディの困惑も察せられます。とにかく、一瞬王への恋心に迷いはしたものの、神のお告げに従って祖国を救うのだという使命感がジョヴァンナという人物に一貫性を持たせている要素だから、それに従うというのが彼女にとっての課題だったのでしょうか???(それを言ったら、実はジャコモを振られたロランド・パネラーイの困惑の方がさらに大きかったに違いないと言っておかないと・・・。この人物は何を考えているのか、理解に苦しむようなキャラクターですから・・・。)

テバルディがこのオペラの蘇演にかり出されたのは、サン・カルロ劇場がパリヘ引っ越し公演するのに際し、適切な演目はないか、と考えた末のことだったようです。『天使の声』に聖女を歌わせるというシャレのつもり・・・だったようです。しかし・・・救国の聖女について、と言いつつ、これだけ無茶苦茶な台本でのオペラの公演をパリの人々はどう思ったのでしょうか???

なお、私がご紹介するのはパリでのライブ録音ではありません。過去にはサン・カルロでのライブの録音も発売されたことがあるらしいのですが、私は買いそびれました。私が持っているのは一連の公演の後、RAIのラジオ放送でOn Airされたヴァージョンの録音です。これは舞台上演の記録でもなければ、スタジオ録音でもないので、困りました・・・。今回は、はてなブログさんのお世話になっていて、快適に利用していますが、子カテゴリは標準装備されていないらしく、やたらめったらカテゴリを増やすと後で困ることになるのが予想されるのです。ラジオの放送用録音は、一発勝負という点ではライブに近いのですが、拍手も何もないし、テバルディの「熱血」ぶりもライブより若干劣るので、スタジオの方に含めることにしました。ご了承下さい。

では、次回から動画と私のコメントを数回のシリーズでご紹介していきます。

 

*1:そういえば、ジャンヌ・ダルクの両親の話は、「史実」には出てきていない気が・・・。

*2:これが、史実では少年のはずなのに、青年です。